「海…」


「何で死神なのぉ…っ」


痛いくらいに抱き締められて、余計に涙が溢れてくる。


ポタポタとこぼれ落ちて、ハチの服を濡らしていく。あれ、あたしこんなに泣いたことあったっけ?


「人間だったら、よかったのに…っ」


あたしの肩も、ハチの涙で濡れてるのが分かる。


「海…、俺は、自分が死神で良かったと思ってるよ」


目と鼻を真っ赤にして、ハチが言う。


「何で…?」


あたしは普通に出会って、普通に恋をして、付き合って、デートして、キスして……そういうこと、してみたかったんだよ。


「海を守れたから」


「え…?」


どうしてそういうこと言うの…?


自分が消えてまで、あたしを助けてなんかほしくなかった。


クリスマスのあの日、あたしを殺してれば、ハチがこんな思いをすることはなかったのに。



「10年前に一度、それに死神界の時の二度目。俺は2回も海を助けられたから。もしも俺が人間だったら、何も出来ないままだったと思う。だから、死神でよかった」

ふんわり、笑う。

そんなこと、言わないで。