あたしがそう言って指差したのは、右手。だったけど、ハチは一瞬しまった、って顔をした。
あぁ、ハズレたな。
なんて思ってたけど、そのあとすぐにハチの両手が少しだけ光って、右手が開いた。
「じゃーん」
ハズレてたはずなのにな。
ハチ、優しいから。きっと魔力を使って入れ替えてくれたんだろう。バレバレなのに。
「わぁっ、何これ…!」
開かれたハチの右手にはリンゴのビーズがキラキラと光っているネックレスがあった。
「ほら、俺リンゴ好きじゃん? 海がこれ持ってれば、きっと一生俺のこと忘れないでいてくれると思ってさ」
「あたしがハチを…? そんな、忘れるわけないじゃない。忘れられたくないなら、ハチはあたしとずっと一緒にいればいいの」
あたしはそう言ったけど、やっぱりハチは何も言わなくて。リンゴのネックレスをあたしに付けてくれた。
「やっぱり、海によく似合う」
冬だから日が沈むのが早くて、オレンジ色だった景色も、だんだんと藍色に変わっていく。
ネックレスのチェーンが冷たくて、それがなぜか悲しかった。