「なぁ海」


「何?」


お風呂上がりだったから、髪の先から滴がポタポタと垂れる。


寝転んでるハチの顔を上から覗いたとき、ポタリ、と一粒滴が落ちた。その滴はハチの顔に落ちて、頬を綺麗に滑り落ちていく。



泣いてるみたいだった。

あたしの髪から落ちた滴が、まるでハチの涙みたいで。


違うとは分かっているけど、胸がギュッと締め付けられる。


「俺、明日は海に行きたい」


優しく微笑むハチが、なんだか寂しそうに見えて、怖くなった。


「…海って、冬なのに?」


明日でちょうどハチが言ってた5日目。

何で5日なの?


あたしはいつだって、ハチのためなら時間をあげるのに。

ハチが望むなら、いつだって側にいる。ハチのために使う時間なら、一生のうちに何時間あっても構わない。


「うん、冬なのに。」


「泳げないよ?」


「見てるだけでいいんだ」