ハチに連れられて歩くこと数分。
「わぁっ、すごい!」
着いた先には、誰もいなくて、ベンチが1つだけポツンと置いてある丘だった。
「だろっ、やっぱさ、誰もいないってとこがいいよなー。300年前の俺にとっては、一番落ち着く場所だったんだ」
300年前、ハチがここに1人でいたんだ。
死神なんて、受け入れる人間きっといないから、寂しかったんだろうなー…
なんてったってハチだし?
人間に受け入れられなかったら、傷つくに決まってる。寂しがり屋のハチだもん。
「今は?」
「今?」
「300年前はこの場所が一番落ち着いたんでしょ? 今はどうなの?」
キョトンとした顔であたしを見て、フッと鼻で笑った。
「そんなのさー、海の隣にいるときに決まってんじゃん。もちろん海も俺の隣にいるときだろ?」
自信たっぷりの、余裕な表情。
分かってるくせに、そんなこと聞いて。
「当たり前でしょ」
そうは言ってみたものの、恥ずかしくてハチの顔を見れない。
丘から見える景色を眺めながら、ハチの手をギュッと握った。