「ハチ、じゃあな」
「おう、じゃあな」
ハチもニッコリ笑って、イブの肩をポンっと叩いた。
窓のわくに乗り上がったイブ。
とうとう行ってしまうのか。そう思ってその背中をジッと見つめていた。
「……っと、忘れ物」
タンッと床に飛び降りたイブが、あたしの手をグイッと引く。
「っわぁ……っ!」
グラッと司会が揺れ、一瞬何が起こったのか分からなかった。
けど、頬に確かな感触。
フニッと、柔らかい感触を頬に感じた。
それは紛れもなくイブの唇で。
「おい……っ!」
ハチがそう言ったときには、イブはもう離れていて、再び窓枠に飛び乗った。
「嫌がらせだ、バカハチ」
そう言ったかと思えば、次の瞬間には、もうイブの姿はそこになかった。