黒いローブを着ると、少し大きくて、裾が床についてしまっている。


「フード被れよ」

「あ、うん…」

フードを被ると、目の少し上ぐらいまで布がきて、前がほとんど見えない。顔に影ができてしまっている。


「俺に捕まって、絶対に離すなよ。怖かったら目瞑ってろ。絶対に声出すな。」


イブから手を離さない。
怖かったら目を瞑ってる。
絶対に声を出しちゃダメ。


大丈夫。

ちゃんと頭に入れて、イブについて行けばきっと大丈夫。


「行くぞ…」

バサッと音がして、イブの背中から大きな翼が出てきた。リビングの窓に、イブが足をかける。

小さな声で、何かを呟いている。聞き取れないから、きっと死神語だろう。


「待っててね、ハチ…」


ザァッと風が吹いたかと思えば、目の前が凄い光で覆い尽くされて、思わず目を瞑る。


「絶対離れんなよっ!」

イブが最後にそう言って、あたしとイブの体はフワリと浮いた。さっきまで明るかった周りが、一気に暗くなる。


それと同時に、あたしとイブの周りにたくさんいる何か。ウヨウヨと蠢いていて、気持ちが悪い。


目を凝らしてみてみると、それは辛うじて形を保っている人だった。


血まみれの女の人。

下半身のない男の人。

顔が潰れている赤ちゃん。


他にもくさんいた。


みんながあたしとイブに縋ってきていた。苦しそうに手を伸ばしている。