――――――ドンッ…


今あたしの目の前に、車に引かれて死んじゃった人が1人、転がっていた。


「あーあ………」


あたしが信号の前で止まらなければ、きっと死んでいたのはこの人じゃなくてあたし。

あたしの運が良かったのか、それともあの人が死ぬ運命だったのか…


分からないけど、こんな場所に留まりたくはない。


「だ、誰か救急車!!」


ようやく事態に気づいて、叫び始めた人だかり。

人と人の隙間から、横たわっている人と、赤黒い血の水溜まりが見えた。

最悪、見たくないのに。



「あ、遅刻だ…」

携帯を開いて時間を確認すれば、HRが始まる10分前。


今から急いだって到底間に合う時間ではない。


今日は行くのやめとこうかな…


〜〜♪


そんなことを考えていると、携帯から陽気な音楽が鳴り始めた。


電話だ。