「桜さん?」


「桜?どうしたんだ?」


正面からは不思議そうな、沖田さんの声と心配そうな原田さんの声がとんでくる。


本当に私、どうしちゃったんだろう…


こんな些細なミスさえ恥じらいを感じて、しかも、頬を紅潮させるなんて。


変だ。


「あ、気にしないで下さい…!!」


早く顔の赤みが引いてくれないかと焦る私。


自分の手を頬に添えた。


「桜さん、どこか怪我したんですか…?」


その言葉と同時に誰かの手に握られる腕。


「怪我なんって……!」


いきなりグイ!と引っ張られる腕に驚いて、


「怪我なんてしてません」って言おうとしたら目の前に沖田さんの顔があったためその言葉を思わず、呑み込んでしまった。


大きく見開かれる私の瞳には不安げな、心配そうな沖田さんの顔がうつる。


「どこを怪我したんですか?まさか顔…女の子なのに顔を怪我したんですか!?」


沖田さんの心配そうな瞳には私が写っていて


その瞳に写る私は、なんとも言えないぽけっとした顔だった。


「あ…あの、沖田さん?私どこも怪我してないんで心配しなくても大丈夫ですよ」


どうやら沖田さんは私が顔に怪我をして俯いているのだと勘違いしているようだ。


「え…そ、そうですか…。怪我してないんですね?良かったです…」


ほっと肩をなでおろす沖田さん。


「…ぷっ」


と、その横で


口を手で覆い、肩を震わせながら必死に笑いをこらえている原田さんの姿が目に入る。