「それとね、あたしお父さんに謝りたいことがあるの」


…今まで、言えなかったこと。


「お母さんが死んでから全然話しなくなって…あたしお父さんのせいばっかりにしてた…」


なんだか顔が熱い。

言葉はとどまることなくあふれかえる。


「あたしを養うために働いてるのに…お父さんが仕事人間だからって、お父さんばっか責めてた…」


ぐっと拳を握る。

手のひらに伸びた爪が突き刺さった。


「あたしにだって悪いところあったのに、本当にごめんなさい!」


突き刺さったけど、


「また楽しくご飯が食べたいの!ごめんなさい!!」


痛いとは思わなかった。



お父さんは黙って聞いていた。

あたしの声だけが絶えず受話器の向こう側に響いてた。


「それにね……あたしお父さんの事、お母さんと同じぐらい大好きなの!」


「……凛、」


「お父さんが死んだって、絶対絶対悲しむんだから!!」


――ガチャンッ!!!


そこまで一気に一方的に言って、お父さんがなにも言わないうちに電話を切った。




シ…ン





あたしが言葉を発さなくなると、リビングは嵐が過ぎ去った後のように静まり返った。

時計の針が進む音だけがリアルに聞こえた。