何もない日常。
部活動に明け暮れる日々。
そんな毎日の中に
キミが現れた──…。
無口で
不器用で
年下の男の子──…。
無口で不器用な
年下くん。
ピーッ!
広く、熱気が漂う体育館に笛の音が響き渡る。
部員達は暑そうに手でパタパタ顔を扇ぎながら休憩をし始めた。
某県双葉第二高校バスケ部。
強豪でも有名なバスケ部の練習は、ただ立っている私から見ても辛そうで厳しい。
だけど、その練習が大会で結果を出せる。
「マネージャー、水!」
「あ、うん、はい!お疲れ様!」
私、桃山 莉子(モモヤマリコ)は、その強豪バスケット部の
マネージャーをしています。
中学までは自分もバスケをやる側だったんだけど、膝を悪くして辞めざる終えなかった。
だから高校生になって、プレーする側ではなく、サポートする側に回ったんだ。
それも今年で終わり。
私達三年生は夏からインターンシップや就職活動、志望校の決定など忙しく、部活動を引退することになっている。
だから後は一、二年に任せることになっているのがこの学校の決まり。
「お疲れしたー!」
「「したー!」」
午後七時、部活動が終わり、ミーティングを終えた。
「ん~!」
今日もいっぱい走り、疲れきった体を伸ばす。
伸ばし終えて制服に着替えようと更衣室に向かおうとした時、部長に話し掛けられた。
「莉子」
「拓哉~今日もお疲れ様」
部長の拓哉はこのバスケ部を強くした張本人で部員全員拓哉を慕っている。
それに顔は女子達が噂するほど整っていて、告白されるのはしょっちゅうのこと。
マネージャーの私がラブレター配達係になっているのが現状…。
そんな中、まだユニホーム姿の拓哉が私に話しかける。
「明日から一年の仮入部が始まるから気を引き締めていけよ」
「あ!忘れてた!今年の一年生はどうかなぁ。…わぁ!」
んー、と悩んでいると拓哉が私の髪の毛をわしゃわしゃと撫で回した。
一気にボサボサになる私の髪の毛。
「…ちょ、何するの~」
慌てて髪を直し、拓哉に向けて怒りをぶつける。
そんな私を見てクスクスと笑い手を振って部員達の輪の中に入っていった。