「どうなのってなんだよ?」

「幻聴なの?」

「わからない」

「なんで?病気には詳しいんだろ?」

「俺は医者じゃない」

「でも、ずっと昔から詩野の病気のこと知ってたじゃないか」

「耳鳴りはたまにするらしいけど、幻聴はどうか知らない」

「定期検査は行ってるの?」

「本人に直接聞けばいいだろ?」

「聞けないから、こうして大輔に聞いてるんだよ!」

「知るかよ!何度も言わせるな!俺は医者じゃない」

「なんで何も知らないんだよ!?病気は進行してるかもしれないんだぞ!」

「だったら俺にどうしろって言うんだよ!」

「ふざけんなよ!お前それでも…!」


プーーーッ!!!


浩二がクラクションを思いっきり鳴らした。


「やめろよお前ら。これじゃ今まで楽しかったことが全部パァじゃねーか…」

「………」


大通りを走り抜けていく車のエンジン音が、

僕らの沈黙の中で余計に響く。


僕はそのまま何も言わずにドアを開けた。


「おい一軌。明日も公…」


浩二の言葉を最後まで聞かずに、僕はドアを閉め、家の方向へ歩き出した。


すれ違う恋人たちの楽しそうな会話が、妙に腹立たしかった。




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