「なんだよ、一軌にだけ贔屓!?」
「ま、まぁ、詩野も良かったよなほんとに!あんないい場所で歌えて!」
険悪になりかけたムードをなんとか大輔が繋げた。
「でもあれだよ。海にいて思ったけど、詩野ちゃんよりいい女はいなかったな!」
「やっぱりそう思う!?」
浩二の言ってることは、嘘か本当かよくわからなかったが、
突然元気を取り戻したように詩野が浩二に食いついた。
「うん、超思う」
バックミラー越しに、
不敵な笑みを浮かべる浩二と目が合う。
僕には「女なんて楽勝だぜ」と言っているように見えなくもなかった。
「詩野も単純だよな!」
そう言って大輔はゲラゲラと笑った。
「え?そうかな?私ってやっぱり単純?」
「ハハ。そうだね、詩野ちゃんは単純女王だね」
「各務くんもそう思う?」
「ハハ。そう思うよ」
「そっか。ではこれからも単純女王を一つよろしく!アハ、なんつって」
詩野の思いがけない一言に、
僕らはみんな、大声をだして笑った。
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