普段温厚で、友達には滅多に怒らない浩二だが、

この時だけは表情が少し強張ってるように見えた。


「嫌なっちゃうよな?こんな友達…いつもいつも逃げようとして。ごめん…」


自分の弱さが許せない。

でもそれをどうすることもできない自分が、また悔しくてたまらない。


シーツをギュッと握る手が、自然と震えた。




「詩野ちゃんが言ってたよ」


目頭が熱くなるのを押さえ、僕は浩二に尋ねた。


「詩野が?なんだって?」


「お前にはいつも感謝してるって」


恥ずかしさを隠すため、僕は浩二から目をそらした。


「あの子いつも明るいけど、本当は大きな不安を抱えてるんだ」



わかってる。


そんな素振りなど一切見せない詩野の強さ、優しさは、

僕が誰よりもわかってるつもりなんだ。





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