浩二は椅子を元の位置に戻すと、

僕の手を握り、力強くこう言った。

「お前も頑張れよ!」



そうだ。

詩野にとっても、僕にとっても、今日が勝負の日なんだ。



浩二はそのまま僕の言葉は聞かず、

ゆっくりと歩き出し、ドアの手摺りに手を掛けた。








「なぁ浩二」


秒針の動く音が病室に響いて、僕らの時を刻んでゆく。



「なんだよ?」



「…ちゃんと言えるかな?」


腕を組み、浩二は俯き加減で溜息をついた。


「喫茶店で約束したろ?」






――――
――


『詩野が最終まで残ったら…その時は、結果に関係なく告白するよ』


――
――――



熱く張り裂けそうな想いを今はまだ胸の奥にしまい込む。



「だよね。男に二言はないよな」

「わかってんじゃねぇか」


そう言って浩二は柔かな表情で僕を見つめた。





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