浩二はベッドの脇から、

古ぼけた椅子を取り出し、静かに腰掛けた。


「詩野は…あれからどうしたの?」


「それが……」


僕は息を止め、次の言葉をじっと待った。





「笑ってた」

「え?」

「大丈夫だよ。心配ない。あのあとすぐ元気になって、いつも通り笑ってた。『こんなことでくよくよしてられない。明日頑張らなくちゃ』って」

「強いね、詩野は」


僕は思わず笑みをこぼした。



「浩二、そろそろ時間じゃない?オーディション二時からだろ?」

「そうだな。お前が来れないのは残念だけど、その分俺達が応援してくっから」

「ありがとう。頼んだよ」

「じゃーな。今日結果でたらすぐ三人で報告に来るから」

「あぁ。待ってる」





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