「…なんだ、浩二か」


カーテンが勢いよく開く。

「詩野ちゃんだと思ったか?残念でした」


「別にそういうわけじゃ…」



「もう意識はしっかりしてそうだな」


そう言って浩二は窓際に移動し、雨に濡れる駐車場を見下ろした。


「ごめん浩二。昨日はあんなことになっちゃって…」

「気にすんなよ。お前がぶっとばしてくれてスッキリしたぜ」

「ハハ。そっか」


浩二が振り返る。


「お前あいつのこと知ってたのか?」

「あいつ?」

「ホラ、なんか『なんも変わってない』みたいなこと言ってたろ?」

「あぁそれか。うん、実は半年くらい前にね。電車ん中で同じようなことがあってさ…」

「電車?」

「うん。あの髪の色だ。忘れるわけない。あいつは僕のことなんて知らないだろうけど。その時も電車ん中で大声で喧嘩しててね。あれは彼女かな?」

「ふーん。それでお前が止めたってわけか」

「違うよ。僕じゃない。その時は父さんが止めたんだ」

「親父が!?」

僕はコクリと頷いた。

「へ〜お前の親父勇気あるな〜」


「だから……また同じ様に、あんなに汚い言葉で詩野を傷つけたあいつが許せなかった…」




.