「鼻の下伸びてるぞ」
「の、伸びてないって!」
「本当は期待してんだろ?」
「してないよ!」
間をあけずに否定したことが逆効果となり、
僕はかえって浩二の言ったことを認めてしまった気がした。
「まぁ頑張れよ!」
浩二は満足げだ。
「わかってるよ…」
「最初から素直になりゃいいものを」
「うるさいな!もう!」
「まぁ、お前も詩野という名のオーディションで合格できるといいな」
一瞬空気が静まり返る。
「全然うまくないよ」
「は?お前今のはイケてたろ!」
「ハァ……」
僕はわざとらしく大きな溜息をついて、残りの酒を流し込んだ。
目が合う。
浩二は楽しそうに微笑みながら、僕に新しい酒を渡した。
僕も笑顔でそれを受け取り、二人声を揃えて、
「乾杯!」
その日は朝まで飲み続けた。
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