「オーディションか。楽しみだな!」
浩二は大輔の姿が小さくなっていくのを目で追いながら僕に言った。
「そうだね…」
視線を落としながら、元気なく言う僕を、
浩二が心配そうに覗き込む。
「どうした?」
僕は頭を上げて、今度は空を仰いだ。
「いや、その、さっきの大丈夫かな?」
「さっきの?」
「うん…詩野に気付かれてないかな」
「あぁ。病気のことか。お前暴走してたもんな」
苦笑いをした浩二が僕の肩をポンポンと軽く叩くと、
「大丈夫だろ。詩野ちゃんは鈍感だから」
そう言って、出口へと歩き出した。
「そっか。そうだよな」
僕は自分に言い聞かせながら、微笑んで、
浩二のあとを追った。
「そうだ!浩二!大事なこと忘れてた!」
「なんだよ?」
浩二があと数メートルで出口にさしかかろうとした所で、
足を止め振り返った。
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