「…オーディション?」
「そうよ?やっと自分でも納得できる歌が書けたから、応募したの」
「あ…なるほど。そういことか…」
「何よ、各務くんったらムキになって」
「い、いや、違うよ。そうじゃなくて。その…」
「何よ?」
…元々詩野は、僕に病気のことは知られていないと思ってる。
だから詩野があのタイミングで僕に打ち明けることはあり得ない。
そんなの冷静に考えればわかることだ。
それなのに…
「どうしてこう、いつもアツくなっちゃうかな」
とぼけた表情をして誤魔化すと、浩二が後ろから僕の頭を叩いた。
「本当だよ。お前は少し頭冷やせ。それより詩野ちゃん、俺も知らなかったよ」
「うん。大輔にもさっき話したとこなの」
「もっと詳しく教えてよ」
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