掌に汗が滲み出る。
「実は私、十一月に…」
「ちょ、ちょっと待って!!」
「びっくりしたぁ。どうしたの各務くん?」
「いや、その…早まっちゃダメだよ!もう少し考えた方がいいって!」
「どうして?」
「そりゃお金の問題だってあるし、詩野はまだ若いんだし!」
「お金なんてどうにでもなるわ!それに、若いからこそやっておきたいの!」
「両親には言ったの!?」
「もちろん!誰よりも先に言ったわ!」
「でも、もし…もし失敗したらどうするんだよ!?もう二度と…」
「失敗なんか恐れてたら受けれないわよ!各務くんは応援してくれるんじゃなかったの?」
「それはそうだけど」
「だったら…」
「でも!せっかく夢を追い掛けて東京に来たんだ!もう少し考えてからでも遅くないって!」
「ダメよ!受けれる時に受けとかなきゃ!」
「取返しのつかないことになるかもしれないんだぞ!?」
「何もそこまで」
「他に方法はないの!?」
「ないわ!今はオーディションを受けることが一番の近道なの!」
……………え?
僕は、何かとんでもない勘違いをしてしまっていたらしい。
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