「なに?二人とも喧嘩したの?」
何も知らない詩野は、
当然のように、僕と大輔のことを気にかけた。
大輔が詩野に鞄を渡す。
「おとといさ、詩野を降ろしたあと、先にどっちの家に送ってもらうかで口論しちゃって…な?一軌?」
「え…?あ、うん…」
「そうなの?浩二くん?」
「あ、あぁ。そうだよ。くだらないだろ?」
「フフ、そうね。焼肉といい、二人とも本当ばっかみたい」
「ハハ、そうなんだよ。こいつら困っちゃうよ」
浩二は苦笑いをして、
僕と大輔の様子を横目で伺っていた。
「だから各務くん昨日来なかったのね?まぁ二人とも仲直りできたみたいだし、良かったじゃない」
「まぁ…」
「それより一軌。重大発表があるんだよ」
大輔が何事もなかったように、僕に言った。
「重大発表?」
「そう。重大発表。なっ!詩野!」
そう言って大輔は、詩野の方に顔を向けた。
詩野が「コホン」とわざとらしく咳をする。
「え〜私、実はこの度……」
まさか…
僕は生唾をゴクリと飲み込んだ。
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