「ごめん浩二」
「お前どこいたんだよ?」
「ちょっと、オアシスに」
「?…お前もつまらない冗談言うようになったな」
「まぁ、浩二には負けるけど」
鼻で笑う僕を、浩二も同じように笑って、
軽くどついた。
「それより、もう今日は終わったみたいだな」
浩二が公園に着いた時には、
もう詩野が全ての曲を歌い終えたところだった。
僕らが噴水の逆側まで歩くと、
詩野と、その片付けを手伝う大輔の姿があった。
大輔は、僕がいることに気付くも、一切表情を変えなかった。
「おう、浩二。今日はもう終わったよ」
僕は、浩二が言葉を返す前に、
大輔に言った。
「大輔……その、おとといはごめん…」
沈黙を乗せた風が僕らの間を一回、二回…
ゆっくりと過ぎてゆく。
「いや、悪いのは俺の方だ。謝るよ」
大輔はそう言って、僕の方は振り向かず、
分厚い楽譜を鞄にしまった。
.