そして、その場から強く一歩を踏み出そうとした時、
僕の携帯から着信音が鳴った。
予想以上の音の大きさに、慌てて携帯を開く。
「もしもし」
「ごめん一軌。ちょっと忙しくて手がはなせなかった。電話くれたろ?」
「うん、まぁ…」
「どうした?」
「いや、ちょっと鍵が…」
「鍵?それよりお前今どこだ?昨日電話に出なかったろ?公園に来ないから大輔や詩野ちゃんが心配してたぞ」
「え?大輔と詩野が?」
「あぁ。それで、今どこだ?」
「いや…その。ごめん浩二、昨日実は母さんの実家に帰ってたんだ」
「北海道か?」
「うん。それで今日こっちに戻ってきた」
「随分早かったな」
「ちょっと大輔に謝りたくて。それと……」
「それで今公園にいるのか」
「え?」
「馬鹿だな。丸聞こえだぞ。ギター」
「あ……」
その時初めて、
詩野のギターが、浩二の携帯電話からも簡単に聞こえる位置に自分がいることに気づいた。
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