目を覚ますと、辺りはすっかり暗くなっていた。


重い瞼をなんとか開き、時計を見ると、

午後の八時をまわっていた。



よほど疲れていたのか、どうやら五時間近くも眠ってしまったようだ。




目線の先にある外灯が眩しい。



僕は、その外灯に淡く照らされる中央の広場に視線を移した。



耳を澄ますと、噴水の向こう側から何かが聞こえる。



僕の位置からでは見えなかったが、

それは間違いなく詩野が奏でるギターの音色だった。


その場に荷物を置いて、噴水の近くまで行ったものの、

どこか後ろめたさを感じた。



詩野は多分何も知らないけど、大輔とちょっと言い合いになっただけなのに、

僕は北海道に逃げて、そこで病気のことを聞いたら、

またすぐ東京に戻ってきた。



どんな時でも詩野の歌を聴いてやることが、僕の仕事だったのに、

なんかすごく自分勝手な気がする。



じゃあここで逃げたら?



僕は先生の言葉を思い出した。





“心配ない。見守ってあげなさい”



その言葉が僕の背中を力強く押してくれた。




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