一言でいえば、端正な顔立ちだった。
唇は薄いが鼻はすらっとしている。
艶やかな、決して短くはない髪はひとつに束ねられ、夜風になびいていた。
そして、何よりも人の心を貫いてしまいそうなほど強い眼差しを持つ隻眼―――――
「あんた…、武士(もののふ)か?」
その言葉に一瞬男は目を丸くした。
「……ああ、そうだな。そんなとこだろう。だが、何故問うのだ」
――――武士
それを彼は肯定した。
次の瞬間には山賊女はその武士の裾に縋(すが)りよっていた。
「…頼む!こいつに食べ物を」
「食べ物、だと?」
そんなもの、お前が一番蓄えているはずだ。
そんな目でこの武士は見ていた。
彼がその赤子を覗き込むと、その見慣れない顔にもかかわらずに声もなく、渇いたように笑った。
「こいつ、まだ小さいから柔らかいものしか食えないだろ?……けど、俺は乳が出なかったし」
「なんだと?……お前が産んだ子ではないと申すか」
武士は驚きを隠せずに、口を開けたままでいた。