不安なところと言えば、それはきっともうひとつの山賊集団と鉢合わせしてしまうことぐらいだろう。
通常の彼女なら、敵の一人か二人は意図も簡単に仕留めることができるのだが、
今の彼女は女の弱さをさらけだそうとしていたのだ。
ここでの鉢合わせはご遠慮願いたい。
そんなことを考えながら、山賊女は道から外れて森の中へ入っていった。
―――――誰にも見られない場所へ…。
少し歩くと適度な丸石が目に入った。
山賊女はそこに腰掛けると片方の袖を脱いだ。
日没の――夜になっていく冷たさが、彼女の肩に染み込んだ。
顕(あらわ)になった乳房に赤子の顔を近付ける。
すると、条件反射のように赤子はそれに口付けた。
「……」
なんとも言えない感覚が彼女を包み込んだ。
―――――やはり…
策がないというわけではなかった。
しかしこれは、一種の賭けのようなもので、確実にこの赤子に乳を与えられるというものではなかった。
山賊女は子を産んだ後、乳が出ることを知らなかったのだ。
赤子もこれ以上吸い続けても無駄だと気付いたのか、乳房から離れてしまった。
山賊女は袖を通し、赤子をギュッと抱いた。