「そ、そんなつもりで言ったんじゃねぇよ!………ただ、そういった人たちを俺は見たことがあるからよ─────」
─────<鷹>や<獅子>以外にもかつては複数の山賊が奥州の森にはあった。
ひすいが源九郎に拾われる前に、興味本意でその山賊たちに近づこうとした。
…………といっても、当時のひすいに心は無く、『興味』というよりは金銭目的のために森へ赴いた。
ちょうど森の入り口である山賊が町へ下りるのを見て、そのあとを付いていくことにした。
─────だが今ではこれを後悔している……
彼ら山賊は町を乗っ取ろうとしていた。
金目のものを町に住む人々から巻き上げ、女は自分のもののように扱い、残りの者は町から追い払ってしまった。
ひすいが町の付近まで辿り着いたとき、それらはまるで生きた屍のような『残骸』だった。
人々の瞳から光という光が失せ、そこに映るのは憎悪に満ちた町へ向ける視線のみだった。
今の政宗の母親と、彼らはどこか重なるような思いがする。
故郷というのは自分の拠り所であるのだ。
それは、誰しもが失いたくないと願うに違いない。
「俺はその義姫さんの気持ちがわかる気がするぜ…」
自分にはそもそも故郷がないので、確証を持って言えるわけではない。
だが、彼らと重なるならば、少なくともその瞳を知っている。
「そうか。お前は、優しいな…」
政宗は穏やかに呟いた。