「だが、母上には避けられ続けているな…」





政宗は口に含む程度に酒を飲んだ。






「あの人は、俺が憎いのさ…」






「自分が産んだ子なのに、か…?」





ひすいにとっては理解しがたいものだった。



血が繋がらないが、梵天丸のことは愛しく感じる。ましてや憎悪など微塵も感じたことがない。




それは血が繋がっていれば愛情は深くなるのだろうと思っていた。







彼の顔は悲しみにふけるようなものになり、注いだ酒で無理矢理押し込めてしまおうとする雰囲気を醸し出している。





それが少なくとも嘘偽りでないことを述べているような気がして…────







「なぜ…─────?」







気付けば口に出していた。








「何故…か。理由は二つだろうな。一つは自分の国を守るためであろう…────」






「国?だって政宗さんの母さんはここの国の人だろ?」






「それは違うな…。母上…────義姫は、最上の家から嫁いだ女だ」





「………そうか。自分の家が滅ぼされちまうのは、やっぱり堪えられねぇよな…」






「なんだ、理由がわかるのか」






「なんとなく、だけどな…。政宗さん、じきにその領地を奪うつもりなんだろ?」





上目遣いに政宗を見つめると、彼はふっと笑った。






「正確には、最上の配下の土地だ。…だが、今日は実に勘が冴えるな。なんだ、褒美がまた欲しいのか?」







政宗はぐいっと近づいて、甘い声で囁いた。