「俺は随分と悩んだ…。今までの経験を積んでこれたのも、家督を継げたのも、全て父上のお陰だったからな。だが、父上は自分ごと畠山を討てと言った…─────」






「……………で、政宗さんはどうしたんだ?」






ごくりと喉の奥に唾を押し込む。





政宗は一呼吸置いてから小さく呟いた。






「………だから俺は、撃った────」





「………………っ…!」






吐き気がした。




自分は親の顔を知らないが、親子の縁というのはこんなものなのか…?





そんな疑問が顔にまで出てしまったのだろう。



政宗はひすいを窺うように覗き込むと嘲笑した。






「残忍だろう…?俺は家の存続を選んだ。…それが、父上の願いだということもその言葉でわかったからな」





「あんたは、後悔とかしないのか?」






「当時はあった。だが、今はない。過去を思い出すのは良いが、囚われてはいけないと小十郎に言われてな…」








「えっ…」





確かその言葉は誰かが言ってくれたような気がする…






─────否、忘れるわけがない。


夢の中で会った源九郎にそのようなことを言われた。





「どうした?」




不思議そうに政宗はひすいを見ていた。




ひすいは慌てて首を振った。






「何でもねぇよ。…それより、小十郎さんがそう言ったのか?」






「…ああ。その時、確かにそうだと思ってな。こういった月夜の中で晩酌しながら過去を振り返るだけにしようと考えたんだ」






政宗は側に置いてあった盃と徳利を引き寄せて、酒を注いだ。