しかし、いくら名参謀と呼ばれた彼でも政宗の考える思惑は解せなかった。



――――仕方あるまい。今は殿のご命令を全うするのみ。




最終的に、そう上手く話を丸め、ある女中の部屋へと歩いていくのであった。








さて、残された二人はというと、



「……本当に助けてくれるんだな」



ひすいは腕に抱く赤子を少しだけ強く抱いた。



「何をいうか、当たり前であろう。男児たるもの二言目は許されぬ」



「そうか、ありがとう。…じゃあ、宝、持ってくるからそれまでこいつを…――――」



そう言って政宗に預けようとした瞬間、政宗はそのまま赤子ごとひすいを抱いた。



「なっ?!」



「行く必要はない。俺はお前が欲しい」



その間も政宗の腕は強く抱き締めあげていた。



「欲しいって…、俺をか?」


「他に誰がいるというのだ」




政宗の胸元あたりで確かに、と呟く声が聞こえた。



「無理だ…」



そうは言ったものの、返ってきた言葉は肯定の意ではなかった。



「何故だ。愛があれば何でもできよう」



「馬鹿野郎、考えてみろよ。お前はここの殿様で、俺は山賊だぜ?この身分の差が許す訳ねぇだろ」


ひすいはなお、政宗の腕から逃れようとしていた。


しかし、政宗はこれを離してしまえば一生ものにすることはできない気がして離さなかった。



「関係ない…。俺はお前に惚れた。お前の全てを俺の――――俺だけのものにしたい。な、傍にいてくれ…」