未だかつて、政宗が女を連れてきたことはなかった。
それは、一人の女に執着していなかったからだ。
しかし、連れてきた。
しかも、身分は政宗とは随分離れた者である。
――――そんな者をあそこまでご執心とは……
この女、何奴?
小十郎がひとりで考え込んでいると、ようやく解放されたらしいひすいが声を荒げた。
「つか、こいつに食べ物をくれる約束だったろ!」
「ああ、そうであったな」
ここで小十郎はひすいが抱えている布が赤子であることに気付く。
「赤子…?それは誰との?」
「ふっ、わかりきったことを。俺とひすいの子に決まっておろう」
小十郎は頭を抱えて深いため息をついた。
「ふらっと出掛けている所以は子作りですか…。しかも、その女子、まだお若いみたいですね。…政宗様、いくら貴方様だろうとこのような女子に子を成させるのは…―――――」
「いやいや!本気にしないでくれっ!」
「え…?」
ひすいの遮る声に小十郎は拍子抜けた声を出した。
「俺のでも、政宗さんのでもねぇ。こいつは拾い子なんだ…」
「なんと…」
「まあ、そんな訳だ。確か先日子を産んだ女中がいたよな。そいつの乳を与えろ」
「はっ!」
まさかこの方は、血の繋がらない親子を助けるというのか…
小十郎の頭は様々なことが駆け巡った。