「――――はて、この方はどちら様でごさいましょう」
「俺か?」
「俺………」
見た目は女子(おなご)の容姿であるにもかかわらず、口調はまるで男子(おのこ)である。
小十郎は不審感を抱いた。
そして本来なら―――山賊であるひすいはまったく知りえないことなのだが―――こう尋ねられた場合、名を名乗ることが一般常識である。
その代わりといっては難だが、政宗が口を開いた。
「無論、俺の女だ」
さらりと殊更に言ってしまった政宗の方をひすいは勢いよく向いた。
「馬鹿やろうっ!誤解を生むなっ」
「………ほう。政宗様に『俺の女』と言われて喜ばないとな――――寧ろ、嫌がる女子は初めてお目にかかりましたな」
そう言って小十郎は顎に手をあてて感心した。
片倉小十郎という長身がひすいを見つめた。
「そ、そうなのか…?」
「はい、政宗様は女子によく追いかけられますがゆえ…」
小十郎がにっこりと微笑むと、ひすいの頬が赤く染まった。
政宗は横目でそれを見逃さなかった。
そして腕を伸ばし、ひすいの肩を抱く。