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米沢城に入って、廊下を暫く歩くと一人の男が血相を変えてこちらに走ってきた。
「まーさーむーねーさーまー!」
その声は近づくにつれて大きくなる。
「何処(いずこ)に赴かれておりましたか!家臣総出で貴方様を探しておりましたのですぞ」
「案ずるな、大事ない」
「大事の後では遅かりましょうぞ!」
声を上げるその男とは対照に、政宗は気楽なもので笑っていた。
「それはそうじゃの」
「政宗様、笑い事ではありませぬ!」
「……まったく、小十郎はうるさくて適わぬ」
そうか。
ひすいは合点がいった。
彼は片倉小十郎。
奥州平定の立役者のひとりであり、この伊達政宗の右腕であり、名参謀と言われている。
彼の容姿は政宗に負けず劣らず、端麗であった。
瞳は澄んでいて、どれほど政宗を尊敬しているのかが伺える。
また肌は白く、数刻も陽にあたっていれば倒れてしまいそうな…―――ほど、色白であった。
―――しかし、何故だろうか。
ひすいは自らの心に問いかける。
そこまで弱々しく見える彼が輝いて見えた。
自分には持っていない何かを所有していそうな気がした。
ひすいが見つめていると、小十郎がこちらを向いた。