――――気にかかることがあった。
先ほど、<<俺の城へ>>と言ったのは聞き間違いだろうか?
ここは奥州の地。
そこを平定したのは伊達輝宗の息子、政宗である。
ここを往き来する武士は自ずと伊達家の者であることはわかる。
この目の前にいる武士もそうなのであろう。
しかも、聞き間違えなければ己が城へと言った。
これはある程度の身分なのかと女は考えた。
それに、
米沢の城主―――伊達政宗には異名が確かあった。
それがどうしても思い浮かばない。
先をゆく、この男と縁があるような、………ないような。
――――――
――――――――
そうこうしているうちに、ある城の前に着いた。
山賊女は目を疑う。
「あ…、この、城は――――」
「米沢城よ」
「じゃ、じゃあ、あんたは…!」
「ここ奥州を平定し者、伊達政宗だ」
―――――独眼竜
名と容姿が一致したとき、初めて異名が浮かんだ。
話には聴いたことがある。
僅か五つの歳に天然痘にかかり、その右眼から光が失われた。
そんな異形の姿になっても城主となり、天下を狙っているという―――――