「はっはっはっ!愉快かな、愉快かな!」
「やろ…、馬鹿にすんじゃねぇぞ」
くっくっくっと無理やりに笑いをこらえ、女に手を差し出した。
「参ろう、俺の城へ」
不覚にも、山賊女は胸を高鳴らせてしまった。
差し出された手の先には、あの端正な顔が微笑んでいた。
それが妙に恥ずかしくて、紛らわすためにその手は借りずに立ち上がり、スタスタと歩き出してしまった。
彼女の後ろからは『可愛くない奴め』とまた笑みを溢して呟いていたが、聞こえないふりをした。
しばらくすると、ふと山賊女の足が止まる。
「どうした?進めぬか」
後ろから両の手をそれぞれの袖に入れて歩いていた武士が言った。
振り返ると、そこにはその理由を既に知ってると言わん顔で悪戯っぽく微笑んでいた。
「………」
負けたような気がしてうずくまっていると、大きな手が頭をポンポンと叩いた。
「俺の後に続け」
そう言って、さっさと先に進んでしまった。
女は離されないようにと早足でついてゆく…。