―――――それから、数年が経った。
政宗は毎日の如く政に精を出し、また梵天丸の世話も怠ることはしなかった。
ちなみに、梵天丸は政宗の子ではないはずなのに、彼に劣らず大変端正な顔立ちになった。
あと数年で元服する彼の身体はすくすくと育っていた。
城下に政宗と出掛けると、決まって梵天丸の方が多く黄色い声に包まれる。
しかし、政宗はそれを羨望することはなかった。
また、梵天丸もそういったことには慣れていなく、あまり良い反応を見せたことがない。
実を言うと、政宗はこの時城に仕える侍女と梵天丸が恋仲にあるのは密かに知っていた。
彼は人を見る目がある。
故に、偶々(たまたま)通った廊下で楽しそうに世間話をする二人を目撃したときはすぐにこれであると悟った。
何しろ、二人の互いを見つめる目が違うのだ。
それはまるで、かつての自分のようで…――――――
――――………ひすいが去った数ヶ月の後、梵天丸は何故母が来ないのかと政宗に尋ねたときがあった。
政宗は事実を述べることもできず、ただ旅に出たとだけ言うと、そうですか、と呟き自分の部屋に閉じこもってしまった。
後で部屋の傍まで赴くと、啜り泣く声が聞こえた。
―――――男児たる者、人前で泣くべからず。
梵天丸は政宗の教えをきちんと守っていたのだ。