「お前、賊の者か?」


これ以上ない証拠が相手方に渡ってしまったため、山賊女に逃げ道はなかった。



武士として、山賊を含めた賊を取り締まるのは勤めのひとつである。



しかし、今この赤子を助けるにはここは避けられない。



致し方なく、山賊女はそれを認めた。




「――――けど、俺をどうにかするのは…!」



「わかっておる。この赤子を助けてからであろう」



「ありがとう…!――――…よかったなぁ、お前〜」



優しく微笑み、赤子の頬を指でなぞるその姿に、また愛情が感じられた。



たまらなく、羨ましいと武士は思ってしまった。




「それにしても…―――――」



武士は義理の親子に歩み寄り、赤子の顔を覗く。



「こころなしか、お前に似ている気がするな」



女はそれに目を輝かせ、笑った。



「本当かっ!う、嬉しいことを言ってくれるじゃねえか」


武士はふっと笑い、今度は女の顔に近づいて言った。



「俺とお前の子、というのはどうであろう?」



「なんでだよ!」



女は相手が武士であることを忘れて殴りかかってしまった。



―――――が、彼は華麗に避け、高らかに笑った。