「駅前で待ち合わせなんだけどね…」

休日の駅前は色々と人が多すぎて、篠森さんの姿は見えなかった。

二人で手を繋ぎ歩く人、男集団で騒ぐ人、仲良くベンチに腰掛ける老夫婦、待ち合わせに壁にもたれかかり本を読む背の高い人…

……あれ?
あの人どこかで…

「仕方ないね。喫茶店か何処かで時間潰そ……」
「……あッ!」

私の驚きに先生まで驚く。

高い背、長い髪、
そしてあのニヤけ面!
間違い無い!

あの時の変質者ッ!!

「なんだよ庵樂…零がいたのか?」
「違います、アイツです!あの人あの人!この前話した変質者です!」

人混みに隠れながら指差す。
変質者は相変わらず本を読みながらニヤついていた。

「何ッ!?あの背の高いヤツか?私の教え子にちょっかいかけるなんていい度胸じゃねーか…ブン殴ってやる!」

先生は変質者の方に近付いていった。
私はその後ろに隠れる様についていく。

一方、変質者はまだ気付かない。

「おい、そこのおま…」
「ヤッホー、美雷!遅れてゴメンね」

タイミング悪く、篠森さんが間に入ってきた。
それに気付いた変質者が本を閉じて顔を上げた。

ヤバいよ!先生!
逃げて!篠森さん!