篠森さんは少し考えてから、こう告げた。

「なんとかならない…事は無いかな。アタシの知り合いに頼めば、ね」
「ホントに!?庵樂、よかったな!」

先生が喜んで抱きついてきたが…私は篠森さんの物思いに耽る顔が不安だった。

「少し時間をくれ。アタシからその知り合いに訊いてみるよ。いけそうならまた連絡する」
「何か不安要素でもありそうな顔ですね?」

耐えきれず私は尋ねた。
彼女は明らかに迷っていた。

…私を助ける事を。

「不安要素か…ま、あるっちゃあるよ。色々ね」

深くは語ろうとせず、彼女は帰り仕度をする。
もはや私に出来る事は何も無い、そう言うかの様に…

「じゃあね美雷。また連絡するよ」

帰り際に振り向き、私に質問を投げ掛けた。

「庵樂幸菜…アンタは不幸らしいけどさ、周りにはこんなにアンタの事を想ってくれる人がいる。それなのに自分は不幸だ、なんて言えるのかい?」

私には両親がいる。
私には友人がいる。
私には先生がいる。

私を想い、私を心配してくれる人達がいる。
なのに私は…不幸だと嘆いている…

私は孤独をしらない。
私は嫌悪をしらない。
私は排除をしらない。

それでも私は不幸なのか?