◆ ◇ ◆



走る走る教室へ。
音を立てない様に静かに、だけど急いで走る。

何故私達走ってるんだろう?

「待ってよホノカ!なんで走るの?」
「いや、目が合っちゃったからさ、なんとなく」

教室の近くまで着くと、走るのを止めて歩いた。

「いやー、まさか鍵穴越しに目が合うなんてね。美人だけど怖いね、あの人」

聞耳を立て、私の話をしていることが解り、仄はなんとなく鍵穴を覗いた。
するとあの人が笑顔で見つめていたらしい。
それを見た仄はビックリして、

「逃げるよ!」

そう言うと走り出した。
何も逃げなくてもいいんじゃないかな?

「逃走本能、ってヤツだよ。私の中の本能が逃げろって告げたんだ」

それ、字が違うよ。

教室へ着き、扉を開けようとした時、後ろから足音が。
足音と言うより、なんか慌ただしく走る音が。

「お?美雷ちゃんが凄い形相で走ってる」
「はぁはぁはぁ…お前ら、早く、席に、着け……」

息も荒々に言うと、前の扉から教室へ入っていった。

「ユキの為とはいえ、遅刻して廊下を全力で走る先生なんて…美雷ちゃんはホント変な先生だね」

二人で笑いながら教室へ入り、席に着いた。