ぐいーん、と仄のお尻が動く。
どうやら方向を変えて、話し相手を見ようとしているみたいだ。

「相手は校長とかかな~…って美雷ちゃんじゃん!?」
「え!?宝杖先生?」

仄に退いてもらい、鍵穴を覗く。
対面状に座り、話し相手は背中を向けているが、髪型的に宝杖先生に間違い無かった。

「なんで宝杖先生が?」
「あの人、美雷ちゃんと年齢近そうだし…友達とかじゃない?」
「いくら宝杖先生でも、学校に友達呼ばないんじゃない?」
「美雷ちゃんだからこそ、学校に友達呼ぶんじゃない?」

…反論出来ない。
確かに先生なら有り得る。
この前は無許可で深夜に学校で肝試し開催した人間だし…

そんな人間を先生にする学校が存在してよいのだろうか…?

「とゆーかさ」
「何?」

仄が真剣な顔で私に訊いてきた。

「今、授業中だよね?」
「そうだよ」
「なんで美雷ちゃんがココにいるの?」
「そうだね…」

先生…
私達の授業、忘れてませんか…?

「授業サボってまで、どんな話してるんだろ?」
「合コンとかじゃない?」
「………」
「………」

二人とも無言になり、
二人とも頷き合い、
二人とも扉に耳をつけて盗み聞きを開始した。