笑顔のまま、彼は続けた。
ワタシは笑えなかった。
何故なら、彼女の不幸は正に『大凶以上のモノ』だったから…

「詳しく訊きたいかい?」
「ハハハ、アタシは聞かないよ。不運不幸は自分の力で乗り切るという信念があるからね。さ、命。帰るよ」

寝間着のまま連れてかれる。
最後に彼は言った。

「不幸を喰らうのは程々に、ね」



◆ ◇ ◆



「いやーすまなかったね。色々と」

家に帰る途中の車内で、彼女はワタシに謝った。

ワタシ自身、まさか気絶して二日間も寝込むなんて思いもしなかった。
仕事の方は彼女が連絡を入れてくれたからいいが…

「まぁ彼の不幸は取り除けたから、ワタシは別に構わないよ」
「でもあんまり無茶しないでくれよ?無理なら無理、危険を冒してまで他人を助けるな。アタシはそんなこと望んでいないんだからな…」

夜、車内、綺麗な彼女。
魅惑的な瞳がワタシを見つめていた。
狭い車内で向かい合う二人。
彼女の唇が上下に動いた。

「着いたよ」
「え……?」

窓の外はワタシの家だった。なんだこの展開はッ!?
いや…まぁ…期待はしてないけどね…

「じゃあまたね」

そう言い残し、車は去って行った。