「おいおい…なんだか顔色悪いよ。大丈夫か?」
「えぇ…大丈夫…です」

視界が暗くなる。
不幸のサイズが大きすぎた。消化不良ということか。

手は既に黒穴に突っ込んでいる。
後は不幸を喰らうだけだ。

「いきます……」

グニャグニャの空間を握る様に掴む。
掌で喰らいながらゆっくりと引き抜く。

「……ッ!?」

もう…目が殆んど見えなくなってきた…

手の感触だけが頼りだ。
そのままこのまま、この穴を喰らい尽す!

「おぉ!穴が小さくなってゆくぞ」
「完全に…喰らい尽さなきゃ……」

もう意識が薄い。
陸奥さんの声も遠く聴こえる。
もう時間が無い…

「おい…大丈夫……」
「一気にいきます…」

空き缶を潰す様に圧縮し、
地に埋まる大根を取り出す様に引っこ抜く!

不幸を、
喰らい、
不運を、
解体す。

君に…幸あれッ!

「穴が…なくなった!」
「コレで終わり…です」

意識が朦朧とする中で、視界が暗い中で、陸奥さんを見た。

「後は任せてくれ。必ず六は幸せにするから」
「いや…まだ不幸がありますよ……」

しまったなぁ…
ワタシとしたことが、失敗してしまった…

「悪霊を一人、取り残すなんて…」