ワタシが言うやいなや、陸奥さんは扇子を取り出した。

「任せなさい」

フワリと風と共に舞い、扇子から桜の花びらが悪魔に向かい散り吹雪く。

悪魔の身体にまとわり着く桃色の花びらが、赤々と燃え、その焔に身を焦がした。

「オォオォオォォ……」

その隙に、悪魔の黒い胴体に手を…突っ込む!

「貴方の不幸を喰らいますッ!」

一気に掌から飲み込む。
流石に…大きい…

だが、飲み尽せ!

「おぉ!?悪霊が小さくなってる!」

掌で圧縮せよ。
掌で凝縮せよ。
掌で咀嚼せよ。
掌で吸収せよ。
掌で暴食せよ。

不幸よ、ワタシの掌で昇華せよ!

「コォォォオォォ───……………………」

水洗便所に流れ飲まれる汚物の様に、悪霊はワタシの掌の中へ吸い込まれていった。

「やったじゃないか」
「いえ…まだですよ」

まだ道が残っている。
底無しの穴の様に、黒く暗く深く大きな穴が。

「この穴を閉じれば…ワタシの役目は終わりですから」

あの世にでも繋がっていそうな黒い穴。
そこに両手を差し込む。

生暖かく、
薄ら寒く、
心地よく、
気持ち悪く、

例えるなら半固形の熱いハッカのゲルに手を入れる、そんな感触。