しかしまわりこまれた。

「早ッ!?」
「やはりコレぐらいの悪霊だと手が付けられないな…」

おいおい…
まだあのバケモノを悪霊と言うのか?

大きな巻き角、
漆黒の大翼、
怪獣の面、
どこからどう見ても悪魔じゃねーか?

「とりあえず陸奥さん、さっさと祓ってください」
「いや、無理だってば。あのサイズだと足止めが限界だね」

悪魔はグルルルと唸っていた…
どうしたものかね?

……あ。
もしかして……

「1つ尋ねますが…」
「なんだい?」
「この六の中にいる悪霊はどういう存在ですか?」

悪霊と呼べるモノなら手のつけようが無い。
だけどもし…
悪霊と呼ばれるナニか、なら…

「この世界における悪霊はね、正真正銘悪霊だよ。ただし…」

彼はワタシの考えが解った様だった。

「悪霊は人の不幸の具現だからね。六の中においては『不幸そのもの』に過ぎないよ」

その言葉を聞いて、ワタシは覚悟を決めた。
あの黒い塊が悪霊や悪魔ではなく不幸だとすれば…

喰らうのはワタシの役目。

「陸奥さん」
「今度はなんだい?」

ゴァァァと咆吼し突っ込んでくる悪魔を見据え、ワタシは駆け出した。

「足止め、お願いしますね」