「斎藤六さん、手を出してください」

それを聞くと彼は素直に手を差し出した。
指の長い、実に綺麗な手だった。
その手を両手で握る。
深く…より深く意識を集中させながら……

「あの…須佐野さ……」

そこでワタシの意識は完全に途絶えた。
彼の中へ、起源へと向かったから。

彼の根本たる起源の元へ。



◆ ◇ ◆



「いらっしゃい」

男の人の声で目を覚ます。
目を開くと傍で斎藤六が立っていた…いや、

斎藤六に似た男性が立っていた。

「はじめまして、須佐野命と申します」
「おや?以外と礼儀正しいね?俺を消しに来た殺人鬼なのに」

何故ならこの人は目上歳上、既に生存してはいない人物であり、人間なんかよりよっぽど崇高な『守護霊』だから。

「成程ね、全て解ってますって顔だな。俺は斎藤陸奥、ご存知の通り守護霊やってます」

両手を前に垂らし、幽霊であることをアピールしていた。

「で?やっぱり俺を消しに来たんだよね?」
「いえ、ワタシは悪霊を祓ったりは出来ませんよ。不幸の元を取り除きに来たのです」

解りやすく危害は加えない事を言ったのに、悪霊と呼ばれたショックで彼はスネていた。

話聞けよ…