店内を見回す。
男の数は少ない。
誰もが平和そうな顔をしている。

「不幸そうなヤツはいないなぁ…」

突然目眩。
世界が回転し、
視界が暗転する。

見えたのは不幸の映像。

閉じた部屋、
繋いだ手足、
囚人と呼べるぐらい最低な暮らし。

喚き狂い、
哭き吠え、
耳を塞ぎたくなる。

狂人を飼う。
そんな光景。

「いらっしゃいませ、何名様ですか?」

店員の声で我に返る。
横を見ると営業スマイル全開の店員がいた。

「二人です、……斎藤六さん」
「二名様ですね、少々お待ちください。あと少しで終わりますので」

不幸な店員は会釈すると、ワタシ達を席に案内して奥へ消えて行った。

「残念。一発で解ったか」

席に座ると彼女が心底残念そうに呟いた。

「アレは解りますよ。何しろ近付いただけで鮮明に予知が視えたぐらいだから」

不幸な体質に、
不幸な運命。

中々に大きな不幸。
確かに『見れば解る』、な。
視れば解る、かな。

「で、どんな予知が視えたんだい?」
「囚われの狂人、最高の映像だったよ」

彼女が予想通り、といった顔をした。
我々同族、すなわち異様なチカラの有る者達の末路はこんなモノだった。