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家を出てから二時間。
着いた先は都市から少し外れた町だった。

「此処は何処だい?」
「アタシの故郷だよ」

ギッ、とサイドブレーキを上げる。
路駐だけど取り締まる事も無いだろう。

「さて、此処からは歩きだ。行くよ」
「いい故郷じゃないか」

周りを見る。
家が少し。
道路で舗装されてるが、緑豊かな風景。
実にいい所だ。

ワタシの住む町、九十九市とは大違いだ。

「ほらほら、ボーッとするなよ。こっちだよ」
「…あぁ、すまない」

前を歩く零。
彼女はこの町で育ち、この町の同族を助けてきたのだろう。

だとすれば…
彼女でさえ手に負えぬ存在が、何年も前から不幸を背負い続けてきたのだ。
ワタシが助ける事が…果たして出来るだろうか…?

「此処だよ」

急に足を止め、喫茶店を差す。

中には満席とまではいかないが、そこそこの人数が座っていた。

「さて、この中に斎藤六はいる。当ててごらん」

ニヤニヤと楽しむ零。
彼女の悪い癖だ。
能力テスト、とでも言うのだろうか?
彼女はしばしばワタシを困らせて楽しむのだ。

失敗に期待する眼差し。
それならば…

見事に期待を裏切って差し上げましょう。