篠森零は仲間に、特に同族には信じられないぐらい優しい事は知っていた。
斎藤六の件以来、ワタシにも異常に優しくなった。
どうやら斎藤六の不幸を取り除く事を頼んだ手前、責任を感じたらしい。

そして、そのきっかけを作った事件。

斎藤六の不幸。

今でも十分異常なのだが…
当時の彼は更に異常だった。

まぁ彼女の周りにいる人間は異常な者が多い。
彼女自身異常だからね。

そんなワケで、
青年斎藤六は、
一年前、不幸だった…



◆ ◇ ◆



雨の日、夏の雨。
煩い雨音、だけど心地よい。

「夏雨も悪くない…な」

休日に雨。
家でボーッと雨音を聴くだけ。

雨の降る音。
雨が流れる音。
雨が鳴る音。

「………え?」

雨じゃなくて携帯がピロピロ鳴っていた。
誰だ…?

「げ…篠森零……」

零からの電話。
しかも休日。
先週は依頼。
先々週は心霊スポット巡り。

マトモな電話じゃないのは解りきっている。

出ないで、このまま無視する。
コレがベストなんだ。

解ってる…解ってる…
解ってるんだけど…

「はい、もしもし?」

出てしまう自分がいる。
断れない自分がいる。
どうしようもない善人がいる…