先生は姿勢を正し、私を見つめて言った。

「不幸もココまで来ると一種の奇跡だね」
「確かに、ユキは奇跡的なドジだけどね」

コイツら…
親友と恩師とは思えない…いや思いたくない…

「いや、私は真剣に言ってるんだよ?」
「私も真剣ですよ?ユキの不幸はドジすら超越する奇跡でしょ?」

先生は深くタメ息を吐くと、軽くホノカをこづいた。

「私はね庵樂、コレは一種の奇跡だと思っている。奇跡とは何もイイコトばかりじゃない。キリストだって、彼自身は奇跡の恩恵を受けていたと思わないだろ?」

おいおい…
例えに磔されたとはいえ『聖者』の名前を言っちゃったよ…

「奇跡の体現者は得てしてそんなもんさ。だけどね、体現者本人には奇跡から逃れる術はない」
「つまり…諦めろ、と?」

横から茶々を入れるホノカ。それを少し強くこづく先生。

「奇跡を解除出来るのはね…同じく奇跡だと思うんだ」

奇跡の相殺だね、と両ひとさし指でバツを作り説明する。

「奇跡って…そう簡単に見付かるモノなんですか?」
「私の知り合いに詳しいヤツがいるから安心しな。特大の奇跡を探してやるよ」

グッと親指を立てる先生。
やっぱり、この人が先生で良かった。